<心療内科ってなぁに? 第130回 医食農の話(11) “酸味”の話>
第4週は自然(食事)と健康についての話題です。自然農の話だけでなく、食べ物と味との関係やエネルギー、漢方薬についても話していきます。
味と身体の関係についての話
「“酸味”の話」「どうして、妊娠するとすっぱいものが欲しくなる?」
漢方薬の作用をあらわす重要な言葉として、“気”と“味”があります。しかし、ほとんどの人が、この“気”や“味”をあまり意識しないで漢方薬を処方したり飲んだりしています。生薬(漢方薬で使われる草花単体)に関する本には、必ず“気”や“味”について記載されていますが、「処方の名前を覚えるだけで大変」「今の前にある症状を改善したい」「すぐ使いたい!」などの理由で、症状と処方をつなげて漢方薬を使うことが多いのが現状です。漢方薬を使うための最初の入り口としてはこれで問題ないのですが、漢方薬の本来の力を実感するにはやはり“気”と“味”についても学ぶ必要があると感じています。
「私たちは医者や薬剤師ではない」「“気”や“味”などの難しいことは覚えなくてもいい!」という声が、皆さんから聞こえてきそうですが、「どうして、妊娠するとすっぱいものが欲しくなる?」その理由を知りたくないですか?“味と身体の関係”について理解が深まると、この理由を知ることができます。皆さんは毎日食事をしています。そして、人それぞれに“味”の好みがあります。どうしてなのか知りたくないですか?そのわけを知って活用できると食事を食べたり、作ったりするのが少し楽しくなってきます。
前置きが長くなりましたが、今回は“酸味”の話です。
「“酸味”の食べものは、体(脳+身体)にとって、どうして必要?」「そもそも、“酸味”の作用、特徴にはどういったものがある?」、この疑問について答えていきたいと思います。
“酸味”を味わうことができる代表的なものは酢酸やクエン酸です。酢酸やクエン酸を用いて説明してもいいのですが、皆さんの周りにはこれらが単体では存在しておらず、なじみにくいので、身の回りの実際の食べものを用いて説明していきます。この説明が本当かどうか、みなさん自身の体を通して体験して確かめてくださいね。単なる知識ではなく、自身の体を通して得た感覚や体験が“答え”となります。インターネットの情報は単なる知識です。このブログの内容も情報なので、まずは疑って読み、実際に体験してみて、自分の体を通して確認していってください。
“酸味”のもの、例えば梅干しを口の中に入れると、口の形はどのようになるでしょうか?実際に梅干しを口に入れてみましょう!答え:口は“ぎゅむっ”と収縮します。余りにもすっぱい梅干しを食べたときは“うー、酸っぱい”と、顔全体が収縮します。これが“酸味”の作用「外から内への作用」「物を集める作用」です。漢方的には「収斂の作用」と呼びます。収斂させる、集める、とはどのような状態でしょうか?激しいスポーツを行った後は、水分や栄養分が外に出て、身体が虚脱します(スポーツを行うという事は、発散の作用を強く働かせるということです)。この虚脱の状態を早く改善させるのが、“酸味”の「収斂作用」です。
皆さんはスポーツ中やスポーツ後にレモンの砂糖漬けや酸っぱいドリンクを食べたり飲んだりしたことはありませんか?これは大変理にかなっていることです。レモンはとても酸っぱいですね。夏に飲む梅シロップジュースは最高です(自然のスポーツドリンクとも呼ばれています)。“酸味”の「収斂作用」は水分や栄養分の発散にブレーキをかけ、水分や栄養分を集め、これらを筋肉や肝臓に蓄える作用があります。この収斂の作用は脈を診てもわかります。スポーツ後、脈は発散作用によってその直径が大きくなっていますが、酸味のものを食べたり飲んだりすると、引き締まります。
図で書くと、このようになります。“酸味”の作用は「収斂作用」。この「収斂作用」は、“辛味”の「発散作用」と逆の作用です。“酸味”の食べものや飲み物は、物(血や液体)を集める働きを持っています。

皆さん“酸味”についての理解が深まりましたか?
「どうして、妊娠するとすっぱいものが欲しくなる?」
この答えは、来月に書きたいと思います。
それまでは、皆さんの周りにある“酸味”を探して、飲食して、その作用を感じてみてください。そうすると、皆さん自身で答えにたどり着けると思います。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉
