“心”は“体の運転手”。 メンテナンス技術と運転技術(ドライビング技術)、これらの技術を身に着けていくことが、「心Coro Heartの成長=行動の成長」につながります。“体(脳+身体)の使い方=運転技術”を習得し、健康を作っていくことができるようになると、症状が出にくくなりお薬が減っていきます。
皆さんはフィードバックを上手に活用できていますか?
体からのサイン、特に危険信号を適切に受け取って、理解して、その情報を健康になるために活用していますか?
フィードバックループを作れるようになると、「体の成長」「行動の成長」につながり、病気になりにくくなります。
入院や外来での治療に、フィードバックループをどのように活用しているのか、例を挙げて説明したいと思います。
治療初期は薬を用いて対応しています。時に「薬でなく、カウンセリングだけで治りたいです」との申し出がありますが、とても軽い症状のとき以外は、薬の手助けが治療に必要になるため、この申し出に対しては「薬の使用なしでは治療は困難です」と伝えています。薬の内服、特に脳神経系に関連する“睡眠導入薬” “抗不安薬” “抗うつ薬”などに恐怖感がある方がいます。薬剤使用に不安や恐怖がある方には、少量の薬剤から初めて効果を確認しながら適切な量に持っていきます。
*少量の薬剤を使用 → “症状”が減った → 薬剤の効果を話し、確認をとる というフィードバックループを繰り返しながら、薬剤の使用についての理解を深めてもらっています。
薬で症状が改善して、少し余裕ができた時から、少しずつ“症状”の意味を伝えていき、患者さん自身でフィードバックループを作れるように指導していきます。ストレス関連の病気は「脳の使い過ぎ」が原因なので、「脳の使い過ぎ」→ 身体症状、精神症状が生じる、ということを繰り返し伝え、確認していただきながら、病気についての理解を深めてもらっています。私の外来では、「脳の使い過ぎ」の患者さんには「考えることが大好きですね」という表現を用いて対応しています。
Pt:「家の片付けのことを考えていると眠れなくなりました」
「大掃除をしなくてはいけないし」
「子供や孫も来ます」
「布団も干さないと」
Dr:「やることも多いですね」「いろいろ考えていませんか?」
Pt:「いいえ、あまり考えていません」「成績もよくなかったし」
Pt:「新聞に不安神経症と書いてありました」
「私はこの病気でしょうか?」
「症状が新聞に書いてあったものとそっくりです」
Dr:「新聞もよく読まれていますね」
Pt:「新聞は隅から隅まで、毎日読んでいます」
Dr:「そのように読んで、勉強家ですね」「多く考えていませんか?」
Pt:「そのようなことはないです」
Pt:「このお薬大丈夫でしょうか?」
「インターネットで調べたら副作用のことがたくさん書いてありました」
「認知症になるとも書いてありました」
Dr:「いろいろと調べることが好きなのですね」
Pt:「そうかな~」
Dr:「インターネットに、お薬のよい点については書かれてありましたか?」
Pt:「・・・」
Pt:「半年後に○○があるのですが、大丈夫でしょうか?」
「不安になります」
Dr:「半年後のことなど、いろいろ考えていますね」「考えることが大好きですね」
Pt:「そういえばそうですね・・・」
このようなやりとりを繰り返し行っていきます。
脳機能の異常はデータとして示すことができません。そのため、基準値を作るということもできず、「あの人と比べて脳を使っているな?」など、他の人と比べることもできません。そのため、本人の体験を基にして、「多く考えていますね」「考えることが得意ですね(好きですね)」ということを繰り返し伝えていくという作業を行っています。
自分自身で「脳を多く使っている」ということを自覚できるようになり、「私は考えることが大好き」「いつもいろいろ考えています」など患者さん側から話が出てくるようになると、患者さんの“症状”は出にくくなります(症状がよくなっています)。
「脳を多く使っている」ことに気が付くことができるようになると、症状を出している原因にも気付くことができるようになります。この時点になると、「自らブレーキをかけられる」「考えることを止める」という技術も向上し、補助ブレーキの役割をしていた薬の量を減らしても、再び症状が出るということは少なくなります。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉
