心療内科ってなぁに? 第151回 症状ってなぁに?14 患者さんとのやりとり2

“心”は“体の運転手”。 メンテナンス技術と運転技術(ドライビング技術)、これらの技術を身に着けていくことが、「心Coro Heartの成長=行動の成長」につながります。“体(脳+身体)の使い方=運転技術”を習得し健康を作っていくことができるようになると、症状が出にくくなりお薬が減っていきます。

 

今回は「脳のマラソン」の話です。
体を使ったマラソンでは手足の動きを目で見ることができるので、“疲労”や“息切れ”の原因がマラソンにあったと認識しやすいのですが、脳を使うという行為(行動)は目で見ることができないので、「脳のマラソン」による疲労や息切れの症状は、患者さんにとって認識しにくいものになります。

 

Pt:「ここ数日、せっかく調子がよかったのに、急に吐き気が出て、気分が悪くなりました」
「頓服のお薬を飲んだら少し良くなりました」
「1日たったのに、まだ症状があり調子が悪いです」

Dr:「どうしてそうなりましたか?」
「何か変わったことがありましたか?」

Pt:「昔の嫌なことが思い出されて、昨日は1日中そのことについて考えていました」
「少し書き出してみようと書いていくうちに止まらなくなって、夜の12時過ぎても考えて書いていました」
「もしかして、これが原因ですか?」

Dr:「原因があって結果が出てきます」
「体のどこかを使い過ぎたために、体からサイン、危険信号がでてきます」
「体のどこか使い過ぎた所はないですか?」

Pt:「家で過ごしていたので体は使っていないし・・・」
「色々考えて脳を使っていました」

 

一度体験すると病態への理解がぐっと深まります。“百聞は一見(一体験)にしかず”です。

 

Pt:「そうか」
「脳の使い過ぎが原因で吐き気がでていたのですね」

Dr:「よく気が付きましたね」
「脳の使い過ぎで出てきた症状です」

 

Pt:「脳の使い過ぎは、次の日にも影響があるのですね」
「そういえば病院を受診する前も同じ症状で悩んでいました」
「胃腸の検査をしても何もないといわれました」

Dr:「脳の使い過ぎで出てきた症状は、改善するのに最低でも使った時間や日数と同じ時休む必要があります」
「使った時間の1.5~2倍の休みが必要になることもあります」

Pt:「え~、そんなにかかるのですか?」

Dr:「24時間マラソンしたとしたら、改善にどのくらいかかるでしょうか?」
「24時間でコンディションは改善しますか?」
「疲労感はすぐにとれますか?」
「筋肉痛はとれますか?」

Pt:「なんとなくわかってきました」
「脳のマラソンを行うと、改善するには時間がかかるのですね」

 

採血検査やレントゲン検査のように目に見える形でデータを示すことができないので、「脳の使い過ぎ」が原因で生じる症状を理解するのは難しいようです。また、この症状については、一般には広まっていないため、「身体の症状なのに、どうして脳が原因なの?」と混乱する患者さんがいます。加えて、「精神症状は社会的に恥ずかしいもの」という認識があるためか、「私はメンタルの病気ではない!」と頑なに医療側の説明を拒んでしまう患者さんもいます。

 

考えることが大好き」な患者さんには、繰り返し「脳の使いすぎに注意しましょう」「脳は貴重な資源です」「脳を温存してください」と伝えています。

「脳」を使うという行為(行動)は目で見ることができないので、「他の人がどのように使っているか?」「私は他の人よりも多く使っている」など、比較して観察することができませんが、意識して体(脳と身体)と会話しながら、生じている「症状」を観察していると、「脳の使い過ぎ」が原因で生じる症状について、少しずつ理解できるようになっていきます。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉