“心”は“体の運転手”。 メンテナンス技術と運転技術(ドライビング技術)、これらの技術を身に着けていくことが、「心Coro Heartの成長=行動の成長」につながります。“体(脳+身体)の使い方=運転技術”を習得し、健康を作っていくことができるようになると、症状が出にくくなりお薬が減っていきます。
日本では、小学生もスマートフォン(スマホ)を持つ時代になりました。一方、オーストラリアでは16歳未満が一部のSNS(年齢制限の対象となるソーシャルメディア)で「アカウントを作成・保持すること」を原則としてできない仕組みが導入されました(※スマホ自体の所持を禁止する制度ではありません)。この制度は、プラットフォーム側に「16歳未満がアカウントを持てないようにするための合理的な措置」を求め、従わない場合は事業者に罰則(高額の制裁金)があり得る、という設計になっています。
この仕組みに対して、「子どもの健康と安全のために必要」という意見がある一方、「一律の制限は行き過ぎ」「年齢確認がプライバシーを侵害しうる」といった懸念もあり、賛否が分かれています。いじめや有害情報の拡散など、SNS特有のリスクがある一方で、子どもたちにとってSNSが自己表現や社会とのつながりの場になっている、という現実もあるからです。
視点を変えると、意見は複数見えてきます。たとえば、ミクロ(個人の体験)とマクロ(社会全体)では結論が変わりますし、西洋医学・東洋医学・心の医学など、位置や立場が違えば見え方も変わります。
このブログでは、「健康になる」「症状を減らす」「症状が出にくくなる」という視点からエッセイを書いています。そうした視点に立つと、子どものスマホ/SNS使用については、年齢や発達段階に応じて、一定の制約(ルールや環境調整)を設けることが必要だと考えています。
その理由の一つは、デジタル情報を集めたり処理したりする力が伸びる一方で、刺激や情報量が過多になると、脳の負荷が高まりやすい点です。いわゆる“脳のオーバーワーク”の状態に近づくと、疲れやすさや集中力の低下など、さまざまな不調が増えやすくなる可能性があります。
もう一つは、「脳」を使う活動に偏りすぎることで、全身を使う活動の機会が減ってしまう点です。体を動かす、手を使う、生活動作を積み重ねる――そうした経験が少なくなると、身体を使う“技術”が育ちにくくなるかもしれません。
さらに、スマホを介したコミュニケーションが増えるほど、対面での「リアル」なやり取りの経験は相対的に減りやすくなります。会話の間合い、相手の表情や声のトーンを読み取ること、協調して進めることなどは、実際の場面で少しずつ身につく面があるため、経験が乏しいと対人関係の技能が成熟しにくい可能性もあります。
加えて、早い段階から外部情報が絶えず流れ込む環境や、報酬設計の強いコンテンツ(ゲームなど)に慣れると、「内側から湧く“やりたい”」や主体性が育ちにくくなることも懸念されます。外から与えられる枠組みに合わせる力は強まる一方で、自分の内側の感覚に基づいて動く力が後回しになる――そんな偏りが生じるかもしれません。
スマホには良い面もあります。世界中の情報に触れ、多様な価値観を学べることは大きな利点です。ただし「健康」という観点から考えると、使い方を放任するのではなく、一定の制限やルールを設けて、子どもの脳と体と人間関係が育つ土台を守ることが必要であると感じています。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉
