“心”は“体の運転手”。「症状を減らしたい」「元気になりたい」「健康を保ちたい」。そのためには、体(脳と身体)の声に耳を傾けられるようになること、そして、体(脳と身体)を大切に扱えるようになることが大切です。つまり、“養生”の技術が必要です。
スマホには、世界中の情報に触れ、多様な価値観を学べるという良い面もあります。ただし“健康”という視点からは、スマホの使用について一定の制限やルールを設けることは必要ではないかと感じます。
たとえば、飴やチョコレートなどのおやつをあげると、小さな子どもはこれらの甘い食べ物をどんどん欲するようになります。子供の「おいしい」「欲しい」という欲求をそのまま許して、自由におやつを食べることができる環境にしておくと、どのような結果が生じるでしょうか?皆さんも分かるように、肥満、糖尿病、虫歯など、健康を害する結果になってしまいます。
自分自身の体(脳と身体)の健康を管理する技術が未熟である子どもたちには、ある程度の制限を用いて対応する必要があります。もちろん、健康教育も必要となります。スマホも同様に、「楽しい」「気持ちいい」行動を無制限に続けると、脳の健康を損なうことがあるため、注意が必要です。
子供たちの脳は柔軟なため、新たな未知な出来事に対してどんどん対応していきます。多くの情報にさらされると、その情報に対応し「考える力」「考える技術」は上達していきます。一方で、「脳を大切に扱う技術」「脳を休める技術」の教育は行われていないのが現状です。「お菓子を食べ過ぎると病気になる」と教えているように、「脳を使いすぎると病気になる」についても子供たちに伝えていく必要があります。
また、多くの情報にさらされればさらされるほど、その情報に対応し適応することに脳の力を取られてしまい、自分の内側から湧き上がってくる「やりたい」という「意欲」に気が付かなくなっていきます。「考える力」と「自分の“やりたい”に気が付く力」これらの技術をバランスよく育てていくことが、健康教育には大切です。
私自身の経験をもとにしてさらに踏み込んだ意見を述べると、子供のときにより重要なのは、「考える力」ではなく「自分の“やりたい”に気が付く力」と感じます。大人になると「まずやってみよう」という試みは、蓄積された知識や情報によって邪魔されて、行えないことが多いようです。そのため、「自分の“やりたい”に気が付く力」はなかなか向上していきません。小学生の頃の「やりたい」は、「どうすれば硬い泥団子ができるか」「できれば1m上から落としても割れない泥団子を作りたい」「虫を集めたい」「お花で冠を作りたい」などでよいと思います。
“やる気”を育てるにはどうしたらよいでしょうか?患者さんから質問を受けたときは、「やる気を育てるには、全身を使ってやってみた経験を増やすこと、そして小さなことでも自分で決めて行う経験を増やすことが大切です。」と伝えています。
具体的には、「年齢にあわせた内面から出てくる自然な気持ちを大人が意識して拾い上げる」「あまり情報を与えない」「デジタル情報からは遠ざかる」「考える技術の向上は後回し」「全身で感じる経験を増やす」なども伝えています。
“年齢にあわせた内面から出てくる自然な気持ち”を育てていくこと、“自らの決断で行った経験”の回数を増やしていくことが「“やりたい”や“本人自身の意欲や意志”の成長」につながると感じます。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉
