第4週は、衣食住、医食農+園芸についての話題です。
お米、梅干し、納豆、生姜、大葉、シナモン、棗、薄荷、菊花など、食卓にのぼる身近な食材の中には、本草学や漢方の文脈で、生薬として扱われてきたものがあります。さらに、酢、塩、酒、ニンニク、ネギ、ニラ、ゴマ、あずき、乳などについても、生薬の専門書には効能が記載されています。これらは現在の代表的な漢方薬処方に必ずしも含まれているわけではありませんが、時代や地域によっては、生薬的に扱われてきた背景があります。
生薬の専門書を読み進めると、漢方薬への理解が深まるだけでなく、薬膳や食養生に関する知識も豊かになっていきます。生薬の専門書には、「味」についての記載もあります。東洋医学でいう“味”は、単なる舌の味覚だけではなく、その食べ物や生薬が体にどのように作用するかを考えるための重要な手がかりです。もし“味”と体の関係への理解が深まれば、季節の移り変わりと体調の変化との関係にも目が向き、食事そのものへの興味はいっそう広がっていくでしょう。
一方で、生理学的に“味”を考えると、舌の味蕾(みらい:味細胞を含む構造)が、食べ物や飲み物による化学刺激を受け取り、その情報が神経を介して脳へ伝えられることで、私たちは味を判断していると説明できます。基本となる味覚は、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の5つで、食べ物の化学成分が味受容体や関連する仕組みによって受け取られ、その情報が神経活動として脳へ伝えられると考えられています。なお、かつては「舌の場所によって感じる味が決まっている(味覚地図)」という説明が広く知られていましたが、現在では、味受容体は舌の広い範囲に分布しており、特定の味だけを特定の部位でしか感じない、という理解は適切ではないとされています。ただし、部位によって感度に多少の差がみられる可能性はあります。
得られた味覚情報は、味覚神経を介して延髄の孤束核に伝わります。その後、一部の情報は、唾液分泌や表情の変化、場合によっては吐き気・嘔吐に関わる反応など、脳幹を介した反射的な身体反応にも結びつきます。別の経路では、視床を経て大脳皮質の味覚野へ伝えられます。このように味覚情報は脳へ届き、さまざまな身体反応を引き起こしながら、生体の恒常性の維持にも関わっていると考えられています。
西洋医学的には、“味”は「味覚情報がどのように受容され、神経を通って脳へ伝わり、体の反応や恒常性の維持にどう結びつくか」という話になります。一方、東洋医学では、“味”は「食べ物や生薬が体にどう作用するか」という話になります。
視点が変われば、“味”の捉え方も変わってきます。
「“味”ってなぁに?」
分からない時や悩んだ時には、自分の体(脳+身体)を使って体験してみるとよいでしょう。たとえば、酸っぱいものを食べたとき、体はどのように反応するでしょうか。ぜひチェックしてみましょう。
また、「どんな味が好き?」「逆に苦手?」「食べ過ぎると調子が悪くなる味は?」「受け付けない味がある?」――こうした問いを重ねていくと、自分自身の体への理解が深まっていきます。季節や体調によって、味の好みが変わっていることにも気づくかもしれません。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉
