心療内科ってなぁに? 第170回 CPAPは長く使うほど、入院や救急受診が少ない?

今年度から、睡眠医療にもかかわるようになりました。第4週では、「睡眠」についてのお話もしていきたいと思います。

9月になりましたが、まだ暑い日が続いています。夏の疲れも出やすい時期ですので、十分な睡眠をとり、体調管理に気を付けてお過ごしください。

 

写真の花は「サギソウ」です。

白い花が、シラサギが羽を広げて飛ぶ姿に似た、湿地に咲く可憐な花です。とても美しく、初めて見ると「本物の花?」と思ってしまうほど不思議な形をしています。

 

8月中旬には、佐賀県唐津市七山の樫原湿原へ、自生するサギソウを見に行きました。近年は夏の暑さが厳しく、福岡市内で育てるのはなかなか難しいのですが、珍しい花なので鉢植えを購入し、外来に飾りました。皆さん、ご覧になりましたか?

「来年も咲いてくれるかな?」と期待しながら、今もお世話しています。

今月は、CPAPを使う時間と入院・救急受診との関係についての話題です。米国などの研究者らが行った研究(Malhotra A, et al. Sleep. 2026;49(3). doi:10.1093/sleep/zsaf333)をご紹介いたします。

 

睡眠時無呼吸症候群の治療では、CPAPなどの陽圧呼吸療法(PAP)が広く使用されています。しかし、患者さんから「CPAPは一晩に何時間くらい使えばよいのでしょうか?」という質問を受けることがあります。今回の研究では、CPAPの使用時間の長さと、その後の入院や救急外来受診との関係について調べられました。

 

この研究では、米国で新たに睡眠時無呼吸症候群と診断され、CPAP治療を開始した377,830名の患者さんが対象となりました。医療保険の診療データと、通信機能を備えたCPAP機器に記録された実際の使用時間を組み合わせ、CPAP開始後12か月および24か月の入院や救急外来受診について調べられました。また、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、2型糖尿病、うつ病、心不全、心房細動を合併している患者さんについても検討されました。

 

研究の結果、CPAPを長く使用している人ほど、その後の入院や救急外来受診が少ないという関係が認められました。睡眠時無呼吸症候群の患者さん全体では、CPAPの平均使用時間が1晩あたり1時間長くなるごとに、入院や救急外来受診が4.9~6.8%少ないことと関連していました。また、COPD、2型糖尿病、うつ病、心不全、心房細動を合併した患者さんでも同様の傾向がみられ、1時間長く使用するごとに、入院や救急外来受診が4.1~6.2%少ないことと関連していました。

 

さらに、今回の研究では、「4時間以上使わなければ効果がない」という明確な境界があるわけではないことも示唆されました。合併症を持つ患者さんでも、4時間未満の使用から入院や救急外来受診が少なくなる傾向が認められ、使用時間がさらに長くなるにつれて、より良い結果と関連していました。

 

ただし、この研究は患者さんを無作為に分けてCPAPの使用時間を比較した研究ではなく、実際の診療データを調べた観察研究です。そのため、CPAPを長く使用したこと自体が入院や救急外来受診を減らした、と断定することはできません。CPAPをしっかり使用する人は、薬をきちんと飲む、運動や食事に気を付けるなど、ほかの健康管理にも積極的である可能性があります。研究者らも、この点を研究の限界として挙げています。

 

今回の研究からは、CPAPは「4時間使えば終わり」というものではなく、できるだけ長く、睡眠中を通して使用することが大切である可能性が示されています。途中でマスクを外してしまう方も、まずは少しずつ使用時間を延ばしていくことをおすすめいたします。

まだ寝苦しい夜が続くことがあります。エアコンなども上手に利用しながら、快適な睡眠環境を整え、毎晩のCPAPを続けていきましょう。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉