心療内科ってなぁに? 第86回 心と体の関係⑧“クラッチ技術”を習得しよう!②

心療内科ってなぁに? 第86回 心と体の関係⑧“クラッチ技術”を習得しよう!②

 心は“体の運転手”。第3週は“体の扱い方” “運転技術”について書いています。心の成長(英語ではCoro Heartの成長)= 運転技術の習得、についての話です。前回(第83回) の話の続きです。“クラッチ技術”を上達させる方法は、“あえてゆっくり動く” “身体をゆっくり使う”こと、とお伝えしましたがどうでしたか? 行ってみましたか?

 

 “クラッチ技術”を上達させるためには、「脳」と「身体」を同じスピードで動かす練習をすることです。「脳」は「身体」が動いていない時も、色々なことを「考える」ことができますが、「身体」ができる反応(行動)は一つです。「身体」は一つしかないので、本来は「脳」も一つの事を考えて行動していれば、「脳」の健康を保つことができます。けれども今の情報社会では、多くの情報に対応する必要があり、「多く考える」「多く調べる」というような癖がついています。この状況で、無意識に「身体」を使っていると、どうしても「脳」のスピードが「身体」のスピードに勝ってしまいます。「身体」が動いていない時も「脳」は色々なことを「考える」ことができる、これが「脳のオーバーワーク」や“うつ病” “不安障害”の原因になっており、「脳」のコンディションを改善するためには“クラッチ技術”を学ぶ必要があります。

 

 “クラッチ技術”の練習では、「脳」と「身体」を同じスピードにするために、あえて“ゆっくり動く”練習を行います。少しずつ、歩くスピードを減らしてみましょう。ある一定の速度以下、“そろ~り” “そろ~り”歩いている時は“「脳」と「身体」のスピードが一致している”のを感じることができます。もしくは“多くの事を考えることが出来ない”状態になっています。ゆっくり歩いても“色々と考えてしまう!”という人は、足先や指先を意識しながら“そろ~り” “そろ~り”歩いてみましょう。この時「考える」ことができているか、確かめてみましょう。

 

 ゆっくり花呼吸第44回参照 など、患者さんと“ゆっくり動く”練習を行っている時に気が付きましたが、「脳」の活動が強い人は“ゆっくり動く”際になめらかな動きができず動きがカクカクとなっていました。また“ゆっくり動く”という事そのものができずに“どうしても動きが早くなってしまいます”と話されていました。練習始めは「脳」のスピードに「身体」が引っ張られてしまい、「身体」のスピードが速くなってしまうようです。“ゆっくり動くことは難しいですね”と話していた患者さんも、練習していく間に動きがゆっくり・スムーズになっていきました。

 

国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉