
心療内科ってなぁに? 第133回 症状ってなぁに?(5) 良いストレス?悪いストレス?
心療内科ってなぁに? 第133回 症状ってなぁに?(5) 良いストレス?悪いストレス?
“心”は“体の運転手”。 メンテナンス技術と運転技術(ドライビング技術)、これらの技術を身に着けていくことが、「心Coro Heartの成長=行動の成長」につながります。“体(脳+身体)の使い方=運転技術”を習得し、健康を作っていくことができるようになると、症状が出にくくなりお薬が減っていきます。
本来、「ストレス」には“良い” “悪い”はありませんが、患者さんから話を聞いていると、「ストレス」は“心理社会的な問題”で“悪いもの”と認識している方が多いようです。
私たちの体は、温度変化 (暑さや寒さ)、病原体、捕食者、不十分な食物など、さまざまな「外部刺激」「ストレス(刺激)」にさらされています。これらの周囲の変化に対応するために、身体には多くの応答システムがあります。強い外部刺激「ストレス(刺激)」によって、時にはシステム内に障害が引き起こりそうになりますが、このような際には自動調整機能が活性化し、ホメオスターシス(恒常性)に大きな変化がないように制御されています。“熱いフライパンから手を引くといった「行動」”も、ホメオスターシスを維持するめの機能です。
私たちの外部環境にあるありとあらゆる刺激、「人間関係などの心理社会的刺激」「温度や圧力といった生理・機械的刺激」「細菌やウイルスといった生物学的刺激」は、すべて「ストレス(刺激)」になり、これらの情報は、多すぎる、大きすぎると、体に症状を生じますが、一方で、「体(脳+身体)機能の向上」や「行動の成長」に欠かせないものでもあります。
「ストレス(刺激)」には“良い” “悪い”はありません。ではどうして、皆さんは「ストレス(刺激)は悪いもの」と感じているのでしょうか?
それは、「ストレス(刺激)」と“体の症状”とが合わさって記憶され、これらがごちゃごちゃになり、「ストレス(刺激)」を“悪いもの” “嫌なもの”と認識するようになったと考えます。
皆さんが感じている“嫌なもの”は、“(強い)症状”のことです。「熱が出た」「痛みがある」「頭痛がする」「めまいがする」「咳をする」「胃腸の調子が悪い」「血糖値が高い」「コレステロール値が高い」これらの“症状”や“所見”があると私たちは “嫌なもの”と感じ、そして、これらの原因となる「ストレス(刺激)」を“悪いもの”と覚えてしまったのです。
色々な「ストレス(刺激)」中でも、特に人間関係などの「心理社会的ストレス(刺激)」を「悪いストレス」と認識してしまっているのは、この「心理社会的ストレス(刺激)」が言葉で表しにくかったことや、「ストレス」という表現がすっぽり当てはまったからではないかと推察します。「人間関係での嫌な経験」や「家族内の悩み」などは、数値で表すことが難しく、表現しにくいものです。「ストレス」という言葉ができたことで、“上司との会議はストレスだな~”とか“お父さんが口うるさくストレス!”など、「心理社会的ストレス(刺激)」について、言葉で説明しやすくなりました。
「ストレス(刺激)」には“良い” “悪い”はありません。
「ストレス(刺激)」が多すぎる、大きすぎると、体に症状を生じます。
一方で、外界からの「ストレス(刺激)」は、「体(脳+身体)機能の向上」や「行動の成長」に欠かせません。
「ストレス(刺激)」があっても、“強い症状”が生じないように、「ストレス(刺激)」に対応する技術を身に着けていくことが大切です。
自動車の運転、ドライビングで例えると、「風や雨」「交通が混雑している」など外界からの「ストレス(刺激)」あっても、“事故”や“怪我”がなく、目的地にたどり着けるように、適切に自動車を運転できる技術を身に着けることが大切です。
国立病院機構 福岡病院 心療内科 平本 哲哉
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